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  • LTV算出の実際

    Lifetime Value (LTV)はしばしばCustomer Lifetime Value (生涯顧客価値)とも言われるが、その期間は生涯(lifetime)の長さを言っているのかというと現実はそうでもない。では、どれくらいの長さなのかと疑問が湧いてくるが、それにはLTVを算出する目的を理解する必要がある。

    marginal CAC, Marginal ROAS, LTV, CLV framework

    イメージでいうと上図のようになる。上段に売上、下段にコストを示した。上段はある一人の顧客(user)の初回購入金額(1st), 二回目購入金額(2nd),..それぞれの利益(profit/Loss)部分の合算の期待値 (expected)がLTVとなる。何故ここで、期待値という言葉を使うかというと、初回購入を起点とするため初回購入金額はそのままでいが、二回目購入以降はそれぞれ実現するかどうか(継続するかどうか)わからないため数学的に言うと金額 x 確率で期待値をとる (高校一年の数学)。その確率はここでは継続率ということになる。一方、下の段に示したのがCustomer Acquistion Cost (CAC) あるいはCost per Acquisition (CPA)つまりこの顧客一人あたりの獲得コストであり、これをPayback Period (投資回収期間)の売上のProfit とLossの合計期待値で回収しましょう(上段=下段)と言ってる式である。

    話を元に戻すとLTVを算出する目的は「新規顧客を獲得する費用(広告費)をいくらまで使っていいか?」というお題に他ならない。上図でいうと投資回収期間内の初回+二回目+三回目。。。のProfit あるいはLossの合計期待値まで「広告費をつかっていいよ」(いわゆる限界ROAS, 限界CPA, 限界CAC)など、すなわち「限界。。」=「ぎりぎりまで」という意味合い。理想でいえば会社の財務部門と投資回収期間を含めて「握る」わけで、いわばと言うかもはや管理会計の世界になる。

    限界ROASについて補足すると通常世間で言われてるROASとは単純に「購入金額➗広告費」で語られてるようだ。つまり、分子にも分母にもいずれにも継続売上分が混みで語られることが多い。しかし、ここでは厳密に新規獲得の投資回収という趣旨で、売上を「初回」購入に限定し広告費は「全部」(つまり継続購入分も含め)を新規獲得に配布するのが正しい。(どうも「限界ROAS」でググって出てくる記事をいろいろ読む限り、この「新規」と「既存」の区別をして限界ROASを語っている記事は皆無であることに最近気づいた。)この顧客獲得費用を「新規」顧客に限定して(つまり継続注文には広告費を配布しないで)算出するプラクティスが日本には定着していないと言っても過言ではない。少なくとも私の経験では米系ダイレクトマーケティングの会社(教科書にもでてくる程お手本の会社)あるいは、西海岸シリコンバレーのオンラインソフトウェアサブスクリプションの会社でも、いずれも共通してROAS計算上は継続売上を分母から除外して広告費用を新規獲得分にだけ配布して評価していた。では一方、日本におけるFMCG界隈では、オフラインチャネルが先行かつデフォルトになってる広告効率は評価されてきたため上で述べてる限界ROAS的な評価方法は限りなく確立されていないと思われる。

    また生涯 (lifetime)という尺はやたらに長いため、実務上は一定の尺で切って運用することになる。会社によって異なるものの小職の経験では尺の長さは1年であったり5年であったりその商材やサービスの性質によりまちまちであり財務部門と合意の上、尺の長さが投資回収期間 (Payback Period)となる。また、たいていの場合はその限界ROASの値を「今」知りたいわけなので、初めー「推定」という処理がはいってくる。仮に1年という尺であったとしても、購入からまだ1年たってない時点でその値を推定することが多いので、「アタリ」でかりに6ヶ月分実測値があれば6ヶ月を1年に引き延ばす係数を別から推定してとりいそぎ、その値で代用する。然るべき時期がきたら(さらに半年経ったら)後日より正しい値で上書きする手順になる。

    また、この方式を採用するにはもともとの事業が直販 (Direct-To-Consumer)なり通販をしていることがたぶん前提となる。直接顧客に請求書を発行している状態があって初めて[顧客数]あるいは[注文件数]は初めて数えることができる。つまり[顧客数]をデータベース上でカウントできる環境にあること、同一[顧客]の買い物履歴が実際に見れる環境にあれば、自ずと獲得した[顧客]が回収期間に払ってくれるであろう売上から損益計算をしようという発想にもなるだろう。ちなみにAmazon Marketing Cloud (AMC)が素晴らしい点はいわゆるクリーンルームという思想で、ベンダー(メーカー)視点で言うならばエンドユーザーに直接請求書を出さないものの[顧客数]がカウントできこれらの必要な指標計算が可能であること、これはクリーンルーム以前には考えられなかったことである。一昔前までは一つのオンラインプラットフォームに過ぎなかった。

    以下いくつか運用上の注意点

    • 上図の購入金額はAMC上では販売金額であるがベンダー(メーカー)視点でいえば、メーカーからアマゾンへ渡した価格に置き換える処理が必要になる。
    • 上図の初回購入はSQL上ではCTEをつかって同一 userがこの購入より以前(過去一年間など)に買ってないというフィルターを加える必要がある。
    • どんな塊で評価するのか、例えばブランドという塊で切り出すならば同様にSQLのCTEをつかって同一ブランドという塊を切り出す、場合によっては、キャンペーンという単位でくくって評価するなど、どんな塊で評価するのかという評価する対象をデザインする必要がある。
    • 限界ROASといっても実際は「足切り」あるいは「下限」のラインを設定するだけなので、このバーを上げるも下げるも匙加減は試行錯誤しながら。マーケターならばなるべく低い基準を設定してより多くの新規顧客を取り込むことを最優先にするべきである(ここらへんで財務部門との綱引きが始まることにもなる。)

    さらに現実的な話をするなら実際多くの消費財FMCG の会社の場合、マルチチャネルで販売している場合がほとんであり、LTVベースの投資評価に慣れていることは限りなく皆無。しかも歴史的には後発のオンラインチャネルありきで広告費を算出することはまずあり得ない。アマゾン(あるいは楽天しかり)の場合は元々オフラインの商流があって後発でアマゾンあるいは楽天に販売チャネルを拡大している経緯から、広告費の割り振りは既存のありもののチャネルに「右へ倣え」あるいは「既存チャネルと平等に」といった具合で業界平均や競合他社を見ながら売上のXX%という従来のルールで年度計画を運用するのが普通だろう。財務部門とはこのような従来の方式で年度計画のなかで広告予算がきまり、その決まった範囲内で限界ROAS・CAC・CPA設定の匙加減はオンライン部門内で事実上運用されることになるだろう。より新規顧客を増やして長期的な成長を思考するか、あるいはたった今の売上を最大化するか、両極端を見据えながらの運用になる。

    以上のようにAMCを活用してLTVベースのCAC算出は理論上は当然可能であるも、もともとの会社生い立ちが通販やピュアオンラインでない限り、あるいは会社として軸足をオンラインチャネルへ全面的に移して取り組もうという姿勢でないかぎり、財務部門と突然この話を始めても話が噛み合わないことがほとんどなので要注意である。

    Sunset, Tamagawadai Park
    Sunset, tamagawa dai park 多摩川台公園